クスリのリスク

薬を飲んで病気になってませんか?

医療法人甲聖会の甲斐沼 成(かいぬま しげと)です。地域の医療・介護関係者向けにコラムを書きました。お時間あれば、ぜひご一読ください。
 
皆さん、以下のクスリの情報を書いた紙、見たことありますよね?
正式には「薬剤情報提供文書」といい、薬局が患者さんにクスリを渡すときに一緒につけるものです。

実は、これを渡すと薬局に加算がつきます。
国が「患者さんにちゃんとクスリの情報を説明しろよ」
と医療機関に勧めているということです。
 

高齢者の入院の3~6%は薬の薬害事象!!!

高齢者の緊急入院の3-6%は、薬の有害事象による。
という研究結果があります。(※東京大学老年内科の小島先生による論文を参考*)

20人の高齢者の入院があれば、1人は薬が原因の入院なのです。
薬はもともと生体外物質つまりは異物ですので、毒ともなり得ます。
解毒するため、肝臓や腎臓などで代謝されます。(※代謝とは「分解して排出すること」です)
 
少し薬の流れについてお話しします。
• 口から入った薬は、胃を通過して小腸につきます。そこで吸収されてまず肝臓を通ります。そのときに酵素の力により、一部分解されて血の中に入ります。
患部で効果を発揮する一方、血液循環を繰り返して少しずつ解毒・分解が進み、いずれ腎臓より尿として排泄されます。
•これらの臓器は、加齢とともに少しずつ弱っていきます。
• 肝臓自体も少しずつ小さくなりますので、薬の分解力は落ちていきます。
• 腎臓はその機能の単位であるネフロンが少しずつ減ってきます。腎臓の血流も減ってきますので、薬の排出機能が落ちていきます
 
代謝・排泄機能が落ちた高齢者が薬をのむと、薬物血中濃度が上昇しやすいです。
中毒域に入ってしまうと、薬の有害作用がでてきます。
 
そのような背景から、最近よく問題にされているのがポリファーマシー(多剤服用)です。
国は、ポリファーマシーを減らそうと呼びかけています。
ポリファーマシー(多剤服用)とは
•必要以上に医薬品を服用している状態のこと
•複数の医者にかかっていて、処方が重なっていた場合。
• 薬の副作用に対して、また別の薬を処方されていた場合。
なども含まれます。

薬物有害事象や転倒は薬の種類が増えるほど増える!?

医師も簡単にクスリを処方してしまう傾向にあり、高齢者の家には整理されていない薬がたくさんあります。それらを合わせると年間数百億円の損失と言われています。

薬物有害事象や転倒と多剤処方の関係について興味深い論文があります。
東大の小島先生の論文です。
グラフをご覧になってもわかる通り、薬物有害事象や転倒は、内服するクスリの種類が増えれば増えるほど、増えていきます。

問題となりやすいクスリとは?

次に、問題となりやすいクスリについて説明します。

頻尿の薬(抗コリン薬)
バップフォー®やベシケア®など。
膀胱の刺激を少なくする作用がありますし、尿がでなくなる場合があります。

風邪薬
頻尿の薬の場合と同じことが起こる場合もあります。
一部の緑内障を悪化させることがあります。
その他、口の渇き・便秘・認知障害も起こしうります。
わたくしは、基本的に高齢者には風邪薬を処方しません。排尿障害をきたした患者さんが何人かいらっしゃったからです。
 
睡眠薬
深夜や早朝に目覚めてつらいと訴える高齢者は多いです。
それに対して、長く効く作用のある薬を処方されている患者さんが時々いらっしゃいます。
高齢者の場合はふらつきなどの副作用や翌日までの持ち越しが起こりやすいです。
作用時間の短い薬をできるだけ少ない量で始めることが基本です。
 
高齢になれば、必ず睡眠は短く・浅くなります。
若いときのように、熟睡感を得ることは難しくなってきます。
お昼ご飯をたべて少し眠たくなる程度であれば、その状態で睡眠は足りています。
その点で、睡眠薬に頼りすぎない方がよいと思います。それよりも、朝の日光を浴びたり、昼間適度に体を動かしたりすることの方がよい睡眠につながります。
 
骨粗しょう症の薬(活性型ビタミンD3製剤)
ワンアルファ®・エディロール®など。
副作用の少ない骨粗しょう症の薬として、よく処方されることがあります。
小腸からのカルシウム吸収を増やす作用があります。
食欲がない、ぼーっとするといった訴えで受診され、調べてみると薬による高カルシウム血症である時があります。
処方開始時ではなく、しばらく経ってから起こることが多いため、見過ごされやすいです。
前に入院した患者さんも、食思不振で経鼻チューブによる栄養で入院してこられました。
上記の薬を止めただけで元気になり、食事を食べられるようになりました。
 
下剤      
酸化マグネシウムやマグミット®など。
高齢者の弛緩性便秘に対して、よく処方されます。
古くから使用されており、安全性の高い薬と言われています。
しかし、腎臓の機能が正常でもまれに高マグネシウム血症を起こすことがあります。
症状は悪心・嘔吐・口の渇きなどです。
2g/日以上の投与をされている高齢者では、定期的に
血中マグネシウム濃度を測っておいた方がよいと考えます。
 
痛み・炎症の薬  
ロキソニン・セレコックスなど。
けがをしたときや関節の痛みなどに日常的に処方されます。
まれに胃や腸などに潰瘍ができることがまれにあります。
これは、他の潰瘍に比べて死亡率が高いです。
長期に使うときはプロトンポンプ阻害薬などの胃薬を併用するべきです。
長期の投与はさらに腎不全や心筋梗塞を起こしやすくなるため、少ない量で短期間の使用をお勧めします。
 
血糖降下薬(インスリンなど)
高齢者の低血糖は死亡につながる場合があります。
  
抗菌薬(抗生物質)
下痢などの消化器症状や腎障害を起こすことがまれにあります。
 
健康食品
特定保健用食品は、ある程度科学的に効果が実証されています。
しかし過去には、発がん性物質が含まれている可能性があるとして、発売中止となった商品もあります。(「エコナ」という商品名でした)
がん予防・アンチエイジング・美容効果をうたっているが、健康被害を起こしてしまう健康食品もあります。
あまり期待しすぎないようにしましょう。
病気を治せるのなら、すでに医薬品になっています。
詳しくは厚生労働省のホームページを。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/index.html
 
※お伝えした薬が、必ず危険だと言っているわけではありません。
適切な処方で体調がよくなることの方が多いです。

自己判断は禁物!!!

自己判断は禁物!         
ご自身やご家族が服用している薬に不安があっても、自己中断はせずに必ず医師に相談してください。
主治医に相談できないときは、わたしの外来へどうぞ!毎週月曜日午前です。
(最後に宣伝でスミマセン)

* Kojima T, et al:J Am Geriatr Soc, 2012
 

この記事のライターをご紹介

甲斐沼成 (カイヌマシゲト)

医療法人甲聖会理事長

総合内科医

当院は、父・甲斐沼正が1978年に診療所として開院して以来40年、ここ吹田市江坂の地で地域の皆さまに育てていただき、現在に至ります。
地域社会のみなさまとの交流と、敬意をもって患者さまおー人おひとりに寄り添う医療に努め、2007年に財団法人日本医療機能評価機構より認定証を取得。2017年に在宅療養支援病院となりました。
さらに、2018年2月に「地域包括ケア病床」を開設しました。
地域包括ケア病床は、亜急性期から回復期の患者さまを自宅や施設に復帰する手助けをする病床です。
地域包括ケア病棟・療養病棟の運営に力を注ぎ、また在宅療養支援病院としての責任を果たすため日々邁進しております。

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