公的年金の繰り下げ受給の注意点について

リタイア後の収入を増やす方法として「年金の繰り下げ受給」ということが注目されています。
マスコミ等でもよく見かけますよね。

人生100年時代において、年金収入はとても大切。少しでも受給額が増えれば、リタイア後のマネープランにもゆとりが出来ます。

老齢基礎年金、老齢厚生年金とも支給開始年齢はいずれも65歳からですが、どちらも66歳から70歳まで1か月単位で受給を繰り下げることが可能。

繰り下げた月数に応じて1か月あたり、0.7%増額されます。
・1年繰り下げると0.7%×12ヶ月で8.4%
・2年繰り下げると16.8%
・3年繰り下げると25.2%
・4年繰り下げると33.6%
・70歳まで繰り下げると0.7%×60か月で42% 増額されることになります。

増額された金額は生涯変わりませんので、長生きすればするほど受給総額が増えることになります。

こういう政府のPRにより、繰り下げ受給の選択者は2016年度で2.7%。少しずつですが増えているのも事実。
ただ、繰り上げ受給する方の方が圧倒的に多く2016年時点で9.2%。
どうしてなのでしょう。

繰り下げ受給する方が本当に得なのか。
年金の繰り下げ需給制度について詳細にみていきましょう。
 

繰り下げ受給の損益分岐点は?

まずこの繰り下げ制度。
70歳まで繰り下げ可能なわけですが、本人がそれ以前に死亡すれば、年金は全く受け取れません。

受給総額について65歳から受け取った時の受給総額を超える損益分岐点は12年程度。
繰り下げ受給を選択しても12年以上長生きすればメリットが享受できる訳ですが、2017年の簡易生命表によると、65歳以上の方の平均余命は男性が約20年、女性が約24年です。

男性の場合、70歳から受給開始すれば82歳からメリットを享受できる訳です。
つまり平均余命では85歳まで生きるわけですから、3年間はメリットが受けられることになります。
女性ならさらにお得ですよね。

また、繰り下げ受給額の請求は、増額前の本来の年金額を65歳まで遡って一括で受け取るという選択も可能。
急な資金需要があった場合も使えます。

平均余命から考えると、繰り下げを選択した方がお得に思えますよね。
 

詳細の制度の仕組みから考えてみる

それでは、繰り下げ受給の仕組みについて詳細に見ていきましょう。

実は、この繰り下げ制度、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り下げることも可能ですし、どちらか一方だけを繰り下げることも可能です。
(ただし、65歳以前から受給できる特別支給の老齢厚生年金は制度適用外です。)

また、65歳から66歳になるまでに、遺族基礎年金や障害基礎年金等(厚生年金も同じ)、他の年金受給者となった場合、老齢基礎年金(厚生年金も同じ)の繰り下げ受給はできません。

ここからが大切。

①「配偶者による年金加給額」は繰り下げた場合、受給が不可
・厚生年金の加入期間が20年以上ある人が、老齢厚生年金の受給権を得た時
・一定の要件を満たす65歳未満の配偶者がいる場合
⇒配偶者が65歳になるまで加給年金(約40万円/年)が年金額に上乗せされます。
しかし、老齢厚生年金の受給を繰り下げている期間は、この加給年金は受け取れません。加えて、加給年金額には繰り下げによる増額はありません。

②在職老齢年金・老齢厚生年金は増額分が少ない・対象外
在職老齢年金、つまり「65歳から70歳までの間に働いて厚生年金に加入しつつ、老齢厚生年金を受給する場合に、給与額と年金額に応じて、需給年金額が調整される制度」の繰り下げ受給の増額の対象となるのは、在職支給停止額を差し引いた調整後の額となります。
それに加えて、65歳以降の厚生年金被保険者期間分に係る老齢厚生年金額は増額の対象となりません。
*「在職支給停止額」・・・本来支給される老齢厚生年金額から差し引く金額のこと。

③繰り下げ受給増加額は相続されない
老齢厚生年金を繰り下げ受給していた方や、繰り下げ受給の待機中の方が亡くなった時には、遺族が受給する遺族年金の額は繰り下げ受給によって増額される前の本来の額に基づいて計算されます。

④繰り下げ受給増加額込みで税金・社会保険料が決定される
更に、繰り下げ受給によって受け取る年金額が増えれば、場合により、税金や社会保険料も増額します。繰り下げ受給によって増額される年金額がそのまま本人の手元に入るわけではありません。

以上の4点も踏まえて、繰り下げ受給を選択する必要があります。

繰り下げ受給を選ぶ際の検討事項

①繰り下げ受給による無年金期間を乗り切れる資産や収入がきちんとあるか。
将来の年金を増やすために、節約生活に入り、健康を害する等になれば元も子もありません。まずは繰り下げ期間の年金収入補填をよく考えてみましょう。

②加給年金額を受給できない金額と、繰り下げで増額する分のバランスは適切か
老齢基礎年金・老齢厚生年金のどちらを繰り下げるか、いつまで繰り下げるかは、加給年金が受給できなくなる点をよく考えて決める必要があります。
老齢厚生年金を繰り下げ受給することで加給年金がなくなるデメリットは大きいですよね。

③いつまで働き、その間にどれだけの収入があるかをよく考えて、繰り下げ受給年齢を選択する必要あり。
これは①と同じことですが、働く意欲があるうちに、働くことは健康寿命を延ばすためにも大切ですよね。将来が不安だから働くというのではなく、65歳を超えても自己実現の為に働くって素敵ですよね。
働いている間の収入と年金収入をバランスして自分や家族の生活がどうなるかを考えることも大切です。

リタイア後の収支の状況を考え、年金の繰り下げ受給のメリット・デメリットを考えることも大切ですね。
 

株式会社アットウィルのご紹介

株式会社アットウィルでは、法人様向けの「シニアライフの講演会」を開催させていただいております。
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この記事のライターをご紹介

荒牧誠也 (アラマキセイヤ)

コラムサイト穂の花編集長

株式会社アットウィル 代表取締役
1964年 大阪府大阪市生まれ
1988年 関西電力㈱入社。介護事業子会社 ㈱かんでんジョイライフや医療関係子会社 ㈱かんでん在宅医療サービスの設立や運営に従事。関西電力グループのメデイカル・ヘルスケア事業の企画業務や㈱京阪ライフサポートのM&Aに従事後退職。
2017年 関西電力㈱を退社。㈱ベイシスのソーシャルビジネス事業部長に就任。同時に㈱かんでんジヨイライフ時代の仲間と㈱アットウィルを設立し代表取締役に就任。

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