損をしてしまう確定申告

こんにちは。税理士の市川です。
今回は、節税のための確定申告に、思わぬ「落とし穴」もあること紹介したいと思います。

株式投資の繰越控除で医療費の窓口負担が3割に

定年退職後、年金生活を送っていたAさん。
一昨年、株式投資で150万円の損失を出しまいました。
友人からのアドバイスで「譲渡損失の繰越控除」という確定申告をしました。

これは、株式投資などで損失が出た場合、その損失額を最長3年間繰り越し、翌年以降の株の売却益や配当収入と相殺できる制度です。
無料相談会などを活用し、繰越控除の申告を終えたAさんは、翌年に株式投資で100万円儲けることに成功し、ひとまず安心していましたが、なんと医療費の窓口負担が1割から3割になってしまいました。

繰越控除により、Aさんの株式による所得はマイナス50万円(株式投資の利益は実質0円)で計算されていましたが、医療費の窓口負担割合の計算はこれとは異なり、この年に儲けた100万円がそのまま所得に加わってしまっていました。
後期高齢者医療制度では、被保険者の収入の合計額が520万円(単身では383万円)未満は窓口で1割負担ですが、それを超えると「現役並みに所得がある」とみなされ、3割負担になってしまいます。
つまり、Aさんは確定申告をして、前年の損を取り返したがために、年金と株の利益で現役並みの所得となってしまい、医療費が負担増になってしまったのです。
定期的な通院を余儀なくされているAさんは所得税の還付額以上の医療費を負担することになり、損をしてしまいました。


税金と社会保険料とでは、損益に対する計算方法がまったく違います。

所得税は軽くなっても、社会保険料や福祉サービスの自己負担分は高くなる場合があります。

介護保険は負担率で大きく金額が変わる

公的年金で生活しているBさん。単身だが足が不自由で、「要介護1」の認定を受けており、在宅サービスを利用するときもあります。
ある年、株式投資で利益が出たのですが、それにより介護サービスの自己負担が2割になってしまったのです。
介護保険は、単身世帯なら年金も合わせて280万円以上の所得があれば自己負担割合が2割になります。
 
自己負担割合が2割になると、月1万円以上の負担増になることもあります。

当然、要介護度が重くなればなるほど、負担率が変わってしまうことで家計は大きなダメージを受けてしまいます。

「損益通算」で配偶者控除から外れてしまった

ある年、ひとつの証券口座で200万円の利益が出た専業主婦のCさん。

別の証券口座では50万円の損失が出てしまいました。
友人からのアドバイスで「損益通算」の確定申告をしました。
これは、複数の口座で株式を取引していて、一方の証券口座では利益が出ており、一方の口座では損失となっていれば、申告することで取られすぎた源泉徴収分に応じた控除を受けられる制度です。

Cさんはたしかに所得税の還付は受けられましたが、差引き150万円が利益となり、夫の収入と合算すると「現役並みの所得」とみなされ、国民健康保険料がぐっと高くなってしまいました。

さらに合計所得金額が規定額を超え、夫の配偶者控除から外れてしまったので、夫の税負担も重くなってしまったのです。


70歳以上の場合、配偶者控除額は最大48万円となりますが、源泉徴収口座であれば本来しなくてもよかった確定申告を行った結果、かえって控除から外れてしまうことになってしまいました。
実際のところ、株で損益通算して戻ってくる金額はそんなに大きな金額ではないことが多く、他の支出が増えて損をしてしまうことが起こりえます。
特に専業主婦の方が株式投資の確定申告を行うときには注意が必要です。

ふるさと納税は申告漏れに注意

ふるさと納税についても、「ワンストップ特例制度」を利用した後、確定申告を行おうとしている人は注意する必要があります。
ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる便利な制度です。

しかし、この特例制度は確定申告をする場合は無効となってしまい受けることができません。
医療費控除などで確定申告する場合にはそちらが優先されるため、ワンストップ特例制度を利用していても、確定申告する場合には改めてふるさと納税(寄付金控除)の申告をしないと節税効果は得られません。
申告の際、うっかり「ワンストップ特例制度」が有効であると勘違いして証明書を出し忘れてしまった、ということにならないように気を付けてください。

確定申告はたしかに有益な控除もあるとはいえ、思いもよらない落とし穴が多数待ち受けています。申告は手間がかかり、計算もかなり複雑ですので、それだけで大きな負担になります。

払いすぎた税金は取り返したいが、労力を割いたのに損が出ては意味がありませんので十分にご注意ください。
 

この記事のライターをご紹介

税理士:市川 欽一 (イチカワ キンイチ)

頑張る個人を応援する税理士

税理士/1974年(昭和49年)生
大原簿記学校での講師、経営コンサルティング会社・税理士法人勤務を経て独立。
法人だけでなく、頑張る個人を税金面からフォローすることにも注力しており、
Web上で自分で相続税申告書が作成できる「ネットde相続税」
贈与税を中心とした相談サイト「ネットde贈与税」というWebサイトを設立。

また、自分自身の相続に基づくセミナーや「相続前に行う書類・資料の準備」など、
相続人が「相続から早く元の生活に戻る」ための支援にも力をいれている。

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