太平洋戦争を経験した、昭和ひとケタ世代の方のお話

戦争中は普通では経験しない苦労の連続だった!

「五月」は旧暦の呼称で“さつき”。もともと「五月(さつき)晴れ」は梅雨の間の晴れのことでしたが、新暦の定着で五月のすがすがしい晴天をさすようになったとか。私たちが豊かな緑に囲まれた老人ホームを訪れたのは、爽やかな“五月晴れ”の日でした。
 
おしゃべり茶話会を始めたばかりの5年前にお会いした愛知県の知多で育ったNさん。昭和3年生まれで当時85歳でしたが、さっぱりとした性格の方でしっかりお話をしてくださいました。有料老人ホームに入居されていましたが、90歳になられた今も矍鑠(かくしゃく)としておられることでしょう。
Nさんは、兄が2人と4姉妹の末っ子。上とはひと回り以上違うので、喧嘩相手にならず、一緒に遊んだ記憶もないとか。
体が弱く、しょっちゅう医者にかかっていて、学校で皆勤賞をもらったことがないことを残念そうに話されました。その割にはお転婆で、体は小さくても外では男の子を従えて遊び、女学校の2〜3年で体もしっかりしてきて、人並みの学校生活がおくれるようになったそうです。「小学校の6年が日中戦争の南京陥落でしたね。提灯行列がありました。地元の神社まで、みんなが提灯を持って歩いていてそれを見に行きました」。
太平洋戦争に突入したのは女学校1年生のときで、「もう、勉強なんかできません。勤労奉仕ばっかり」。出征兵士の家に勤労奉仕に行って家族の手伝い。稲刈りから、田植え、脱穀機を扱ったり…。農作業の手伝いは、まったく経験がなく慣れないことばかりで苦労の連続。
「女学校3年から学校が工場になって、そこでは飛行機の翼をつくりました。木工ですけどね。木を切ったり、釘を打ったりしました。ときには他の工場に派遣されることもあって旋盤工もしました。それはもう、今の人には考えられないことを色々しました」。卒業式はなく、終戦は家族で疎開した長野で迎えたそうです。

修学旅行へ行くつもりで結婚しに行った!

やがて、誰もが迎える婚期。女学校を出て卒業と同時に18歳で結婚。「結婚のいきさつも面白いのよ。話があったとき、修学旅行がなかったものだから、修学旅行へ行くつもりで結婚しに行きました。名古屋の方と見合いして何にも考えずに。
農作業するよりはいいかなと思ったし、嫌だったら帰ってこいと親が言ったから…(笑)。もう50年も60年も経ってしまいましたが、みんな誰も帰ってないもん、私だけ帰るわけにいかへんかったし…」。2回ほど会って大阪の髙島屋で式を挙げ、初めからご主人の両親と同居。本当におままごとのような結婚生活だったと、思い出し笑いの中に幸せな日々を垣間見ました。
今の人には信じられないでしょうが、当時は写真1枚で結婚をすることも当たり前のように行われていた時代です。戦前にハワイやブラジルという未知の地に嫁いでいった女性も多くいました。
結婚前にお琴にお花、お茶くらいの嫁入り修行はしたが、料理はできないので同居の両親に申し訳ないと思って一から覚えていったとか。家は狭く、すぐに子どもができて考える暇もなく追われるままの日々を過ごしたそうです。
結婚当初は会社に勤めていたご主人は、独立して商事会社を経営していたので忙しく、体を壊した義母の世話もあって、夫婦で遊びに出ることもなく、家族で旅行やレジャーに行ったことない。実家にも法事のときに戻るくらい。
「私たちの時代は、親が白と言うことは黒でも白と言わなきゃならない。心の中では違うわ!と思っても口に出せないし、それも当たり前だと思っていました。今の方の考えでは無理ですね」。映画も観たことがなく、全然遊んだこともない…。その時代はたいていの人が同じだと思っていたので我慢ができたと、あっけらかんと話されるNさんに、戦争を体験した昭和ひとケタ世代の強さを感じました。

この記事のライターをご紹介

昭和の思い出つむぎ隊 (ショウワノオモイデツムギタイ)

昭和の思い出つむぎ隊は、高齢者・障がい者・子ども・外国人とその支援者に対し、安全で安心できる生活に必要な情報および支援の提供をしています。 また、それぞれの活動についてセミナーの開催も行っています。

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